2018/06/21
初期症状をみきわめ受診、進行症状は受容して対応、神経内科的に鑑別と治療
―認知症の初期症状は?
國重誠院長 加齢とともに誰でももの忘れはするものだ。それが日常生活や対人関係で問題となる程なら認知症ととらえることができる。
例えば、今朝の朝食の内容が何であったか思い出せなくても、少しのヒントで思い出すことができるなら問題ない。しかし、朝食を食べたこと自体を忘れて、また朝食を要求するのは問題だ。
つい今しがたのことを忘れやすく、同じことを何度も聞く、同じ物を何度も買ってくるなど、もの忘れが問題となり始めたかなと思ったなら、躊躇せず早期に受診していただきたい。
―病状が進行したら?
國重院長 現在使われている認知症の薬は、悪化をある程度遅らせる作用しかない。よって、遅かれ早かれ、病状は進行するので、介護・ケアが重要だ。
いろいろな記憶は脱落してくるが、喜怒哀楽は障害されにくいので、いやな思いをしたという感情は残りやすい。
幻覚や妄想がでることも少なくなく、頭から否定すればいやな感情を残すことになる。まずは本人の訴えを受け入れ、原因を取り除くことが大切だ。
吊るしてある洋服が人に見えるなら、その服を片づける。電気コードを見て蛇がいる様に見えるなら、コードを見えにくく配線しなおす。
鍵や財布がなくなった、お金を盗られたなどの、物盗られ妄想も厄介だ。一番身近に接し、親身になって世話をしている人が犯人扱いされやすいが、否定しても解決にはならない。どこかに置き忘れていることがほとんどなので、一緒に探して本人に見つけてもらうように誘導する。なかなか見つかりそうもなければ、ほかの話をして、気持ちを探し物以外に向けるようにしよう。
―神経内科専門医として
國重院長 高齢化に伴い、複数の病気を持つ患者が多い。まずは総合内科的に種々の合併症を把握し、その上で神経内科的に、脳卒中の既往の有無や神経変性疾患の可能性を評価、どのタイプの認知症かを鑑別する。
最近、認知症全体の2割に達すると注目されている「レビー小体型認知症」では、ありありとした幻視、手足が震えてこわばり、歩行障害となるパーキンソン症状を伴うことなどが特徴だ。治療と介護に難渋することが多く、薬の選択や、用量のさじ加減に微妙な調節が必要なので、神経内科専門医への受診が望ましい。
当院は、中讃地域で唯一、神経内科専門医が常勤しており、他院との連携も緊密に診療を行っている。